建設業許可と労働保険番号

令和2年10月1日の改正建設業法施行にともない、「適切な社会保険への加入」が建設業許可の要件に加わりました。そのため、建設業許可を新規で取得する場合だけではなく、更新の申請や、業種追加の申請の際にも適切な社会保険に加入しているかどうかが確認されます。それぞれ申請の際には、「健康保険等の加入状況(様式第七号の三)」を作成し、許可行政庁(国土交通大臣や都道府県知事)に提出しなければなりません。この場合の「健康保険等」とは、① 健康保険(医療保険)② 厚生年金保険(年金保険)③ 雇用保険の3つを指します。「健康保険等の加入状況」への記載事項は次の通りです。

健康保険等の加入状況(様式第七号の三)への記載事項
① 各営業所の名称
② 常勤の従業員数/役員数(非常勤を含む)
③ 保険加入の有無(健康保険/厚生年金保険/雇用保険)
④ 健康保険:事業所整理記号および事業所番号(※健康保険組合加入の場合には、組合名を記載)
⑤ 厚生年金保険:事業所整理記号および事業所番号
⑥ 雇用保険:労働保険番号

建設業許可に関して、初めてご相談を受ける際、健康保険や厚生年金保険の事業所整理記号や事業所番号はしっかりと把握されているお客様がほとんどの一方、雇用保険の労働保険番号に関しては、「雇用保険の事業所番号のことですか?」、「保険関係成立届の事業主控えが2枚ありますが、どちらの労働保険番号のことでしょうか?」、「労働保険料申告書の事業主控えが2枚あるのですが、どちらの労働保険番号のことでしょうか?」、「労働保険事務組合から送付されてきた保険料等納入通知書が2通あるのですが...」と、いったいどの労働保険番号を記載すればいいのか、曖昧なお客様が多いと感じることがあります。

建設業は、労働保険(労災保険と雇用保険)の適用や、保険料の申告・納付を労災保険と雇用保険とに分けてそれぞれ別に行う必要があり、さらに、労災保険・雇用保険に関して、個別(自社)で加入し保険料の申告納付をしている場合と、労働保険事務組合に保険料の申告納付を委託している場合とがあり、労働保険番号についてあやふやになってしまうこともあると思います。では、健康保険等の加入状況の報告書へ記入すべき労働保険番号はどこで確認すればよいのでしょうか?

■ここで確認!雇用保険の労働保険番号■

① 個別(自社)で雇用保険に加入・申告納付している場合 (a)雇用保険適用事業所設置届 事業主控え
(b)労働(雇用)保険料(概算・確定)申告書
(※)ふじ色と赤色で印刷されている申告書。二元適用事業であって、労災保険の保険関係に係る事業についての申告書は黒色と赤色で印刷されていますので、こちらに記載されている労働保険番号は労災保険にかかる労働保険番号になりますので注意が必要です。
② 労働保険事務組合へ加入・申告納付を委託している場合 (a)労働(雇用)保険料等納入通知書
(b)労働保険事務組合へ直接確認

労働保険番号の意味と見方を知っておきましょう

↑上記の書類で健康保険等の加入状況の報告書へ記入すべき労働保険番号(雇用保険)を確認することは可能です。さらに、労働保険番号の意味や仕組み、見方を知っておくことで、正しい労働保険番号の記載ができるようになります。それでは労働保険番号の意味や仕組みについて具体的に見ていきましょう。

➡労働保険番号は、① 都道府県番号、② 所掌、③ 管轄、④ 基幹番号、⑤ 枝番号の14桁で構成されています。この14桁の数字は、単に数字を羅列しているのではなく、その数字自体に意味があります。なお、労働保険事務組合へ加入し、事業主も含めて労災に特別加入している場合や、雇用保険料を申告・納付している場合には枝番号も振り出されて14桁の労働保険番号になりますが、個別の事業所で労災加入している場合や、個別(自社)で雇用保険に加入・保険料の申告納付をしている場合の労働保険番号は基幹番号までの11桁(枝番号は000)になります

① 都道府県(2桁) ➡最初の2桁の数字が都道府県を表記しています。北海道の01から沖縄県の47まで47の数字が入ります。
② 所掌(1桁) 所掌は、都道府県番号に続く1桁の数字です。所掌行政機関が労働基準監督署か公共職業安定所なのかを表す番号になります。「1」労働基準監督署「3」公共職業安定所(ハローワーク)を表します。
③ 管轄 ➡管轄は、所掌に続く2桁の番号です。これは事業場の所在地を管轄する労働基準監督署もしくは公共職業安定所(ハローワーク)のコード番号になります。例えば、神奈川県内に公共職業安定所(ハローワーク)は14か所(横浜港労働出張所を含めると15か所)ありますが、横浜公共職業安定所は「01」、横浜南公共職業安定所は「12」となります。
④ 基幹番号 ➡基幹番号は、管轄に続く6桁の番号であり、事業所・労働保険事務組合ごとに振り出されます。この基幹番号6桁ですが、1桁目6桁目の数字に意味があります。
(a)1桁目の数字が「9」の場合:事業者が労働保険関係の事務処理を労働保険事務組合に委託していることを意味しています。
(b)6桁目の数字が「0」または「1」の場合:一元適用の一般の事業所
(c)6桁目の数字が「2」または「3」の場合:二元適用事業の雇用保険
(d)6桁目の数字が「4」の場合:二元適用事業のうち林業等の労災保険
(e)6桁目の数字が「5」の場合:二元適用事業のうち建設業等の労災保険(現場労災)
(f)6桁目の数字が「6」の場合:二元適用事業の事務部門の労災保険(事務所労災)
(g)6桁目の数字が「8」の場合:建設業の一人親方
⑤ 枝番号 ➡基幹番号に続く3桁の数字は枝番号になります。労働保険関係について、労働保険事務組合に委託している場合には、9で始まる基幹番号が振り出されますが、労働保険事務組合の場合、1つの基幹番号で複数の委託事業所の業務を受託することになりますので、その場合には基幹番号に枝番号が付されます。

一元適用事業の場合には、労災保険と雇用保険に関して同じ労働保険番号が発行されることになり、これが最も一般的です。これに対し、建設業等の二元適用事業の場合には、労災保険と雇用保険とでは異なる労働保険番号が発行されます。さらに、建設業の労災保険は、現場労災と事務所労災に分かれています。したがって、建設業における労働保険番号には雇用保険、現場労災、事務所労災の3つの保険関係について労働保険番号が存在することになります。非常に複雑に思えますが、次のポイントを押さえれば簡単に整理できます!

■ポイント■
① 基幹番号6桁末尾の数字は「2」または「3」の場合 二元適用事業雇用保険が成立している
② 基幹番号6桁末尾の数字が「5」の場合 二元適用事業のうち建設業等の労災保険(現場労災)が成立している
③ 基幹番号6桁末尾の数字が「6」の場合 二元適用事業の事務部門の労災保険(事務所労災)が成立している

つまり、建設業許可の新規申請や更新申請、業種追加の際に添付が必要となる「健康保険等の加入状況の報告書」に記載すべき労働保険番号(雇用)について、建設業の二元適用事業では、労働保険番号の「所掌」「3」(公共職業安定所)、基幹番号6桁末尾の数字「2」または「3」(二元適用事業の雇用保険)を記載することになります。

以上、労働保険番号の意味や仕組み、見方について解説させていただきました。労働保険制度は複雑であり、また二元適用事業である建設業などでは、労働保険番号が複数発行されるため、非常に紛らわしいと感じられることも多いと思います。しかし、この労働保険番号は、建設業許可関連の手続きだけではなく、労災事故が発生した場合は、給付請求書に記載が必要になる重要な番号です。この機会に、労働保険番号の意味や仕組みをしっかりと押さえておきましょう!

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