業績連動型賞与制度における賞与額の決定方法について
賞与額の計算方法は、大きく「基本給連動型」と「業績連動型」の2つの種類があります。基本給連動型は、「基本給3か月分」など、基本給の額を基準として支給額が決まる賞与のことで、従来は一般的な賞与計算方法でした。しかし最近では、成果主義へと移行する会社の多くが「業績連動型」の賞与計算を採用する傾向にあります。業績連動型では、まず経常利益や営業利益などの会社業績に従い、社員に支払う賞与の総額(賞与原資)を決定します。賞与原資額が確定したら、賞与査定結果に基づき賞与原資を配分し、それぞれの社員に支払う個別の賞与額が決定されます。今回のブログでは、業績連動型賞与制度の導入フローや具体的な導入事例、メリット・デメリットについて解説します。
目次
業績連動型賞与制度の導入フロー
・業績連動型賞与制度の導入フローを簡単にまとめると次のようなながれになります。
① 業績連動型賞与制度における指標を決定
➡業績連動型賞与制度は、会社の業績に応じて賞与の支給金額が変動する方式です。業績が上がれば支給額が増え、業績が下がれば支給額が減る仕組みです。会社の業績をはかる指標は複数ありますが、賞与原資や賞与支給総額を算出するため、まず用いる指標を決めなければいけません。一般的な指標として、以下の指標が用いられます。
賞与原資や賞与支給総額の算出指標 | 補足事項 |
(a)営業利益 | ※売上総利益-販売管理費および一般管理費 |
(b)経常利益 | ※営業利益+営業外収益-営業外費用 |
(c)売上高・生産高 | |
(d)付加価値 | |
(e)その他 | ※株主価値、キャッシュフロー等 |
※賞与原資や賞与支給総額の算出指標として営業利益を採用する会社割合が最も高くなっています。
② 賞与原資の算定
➡業績連動型賞与制度における指標が決定されたら、その指標のうちどのくらいを賞与原資にするかを決定します。
③ 個別賞与額を決定
➡決定された指標に基づいて社員個人の業績が評価されます。評価の結果、目標達成度合や会社への貢献度に応じて賞与の割合(支給率)が設定されます。何を指標に賞与額が決定されるのか、十分に説明することが重要です。
➡個別賞与額を算定する際、人事考課が活用されますが、その際(人事考課)の指標は必ずしも賞与原資算定時の指標と同じである必要はありません。賞与原資算定の指標を「売上高」とした場合の具体例を見てみましょう。
例)賞与算定期間(6月~11月/半期)の売上が3,500万の会社の年末賞与
※賞与原資算定の指標を「売上高」に設定
諸条件 | |
① 売上累計 (6月〜11月) |
35,000,000円 |
② 人件費率枠 | 40% |
③ 人件費の内訳 | (a)社員の給与総額 (6月〜11月) :7,000,000円 (b)会社代表の報酬 (6月〜11月):3,000,000円 (c)法定福利費:800,000円 (d)福利厚生費:500,000円 |
④ 社員数 | 10名 |
具体的算出例 | |
① 賞与算定期間(6月~11月/半期)の人件費の上限枠 | 35,000,000×0.4=14,000,000円 ※賞与原資算定時の指標と人件費率枠から算出 |
② 賞与算定期間(6月~11月/半期)の人件費等の合計 | 11,300,000円 (上記諸条件③のa+b+c+d) |
③ 賞与原資(≒賞与支給枠) | 14,000,000- 11,300,000=2,700,000円 |
④ 社員1人あたりの賞与支給枠平均 | 2,700,000÷10=270,000円 |
➡実際には、具体的算出例 ④(社員1人あたりの賞与支給枠平均の金額)に対し、人事考課の評価や貢献度から支給率を設定し、個人ごと実際の賞与支給額が決定されますが、ここでの評価や貢献度の指標は必ずしも「売上高」を指標とする必要はありません。一般的な人事考課の査定項目(業績・行動・能力等)で総合的に評価するのがが一般的です。
業績連動型賞与制度のメリット
・業績連動型賞与制度を導入した場合のメリットとして以下のような点が挙げられます。
営業収支に応じた賞与の支給が可能になる
業績連動型賞与制度は、経営状況に応じて賞与の支給額が変動します。会社の業績が悪ければその分賞与の支給額も下がることになります。基本給連動型賞与制度の場合、一定額の賞与支給が必要になるのに対し、業績連動型賞与制度を導入すれば、営業収支に応じた賞与の支給が可能になります。
社員のモチベーション向上が期待できる
業績連動型賞与制度は、会社全体、所属部門、個人の業績によって賞与の支給金額が決まります。業績連動型賞与制度は、業績が上がった分の利益を社員に還元する仕組みであり、社員の頑張りが賞与という形で評価される制度になりますので、社員の業務に対するモチベーションアップが期待できます。
賞与支給額の透明性が高まる
業績連動型賞与制度の場合、賞与支給額の算定の根拠が明確になります。社員に対し、賞与算定の際の指標を周知することで、賞与支給額に対する社員の納得感も得られやすく、賞与支給額の透明性が高まる制度とも言えます。
業績連動型賞与制度のデメリット
・業績連動型賞与制度を導入した場合のデメリットとして以下のような点が挙げられます。
社員から不満が生じる可能性がある
業績連動型賞与制度は、経営状況に応じて賞与の支給額が変動します。会社の業績が悪ければその分賞与の支給額も下がることもあり、業績によっては、賞与が支給されないこともあり得ます。また、担当する業務によっては、社員個人の頑張りが業績に反映されにくい場合もあるため、不満に感じる社員が出てくることも考えられます。
情報開示の必要性が生じる可能性がある
業績連動型賞与制度を導入した場合、賞与原資の算定や、個人実績の評価の指標となる数値の説明や、その根拠を提示するために、財務諸表等の会社資料を社員へ公表する必要が生じる場合があります。中小企業の場合、財務諸表等の情報を社員へ公開していない場合が多く、その点も留意する必要があります。
制度導入時の注意点
業績連動型賞与制度は、業績が上がった分の利益を社員に還元する仕組みであり、社員の頑張りが賞与という形で評価される制度になりますので、基本的には社員の業務に対するモチベーションアップが期待できる制度といえます。ただし、人事や総務、経理などのバックオフィスの場合、社員個人の業務が即会社の業績に反映されないこともありますので、部署ごとの業績の指標を定めたり、個人の評価方法をしっかりと説明し、公開することが非常に重要です。
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