コンビニ・ダイバーシティー
この数年の間で、多くのコンビニエンスストアにとって、外国人従業員はなくてはならない存在となりました。当事務所でも、コンビニオーナー様より、「現在アルバイトで働いている外国人の就労ビザを取得できないか」というご相談を受けることがあります。
➡ここでいう就労ビザは「技術・人文知識・国際業務」をいいますが、そもそもコンビニエンスストアで外国人を正社員として雇用することが可能なのか、また現在コンビニエンスストアで働く外国人の方々はどのような方たちで、どのような在留資格をもって働いているのか。このぼんやりとした部分に焦点を当てて解説していきたいと思います。
目次
コンビニで働く外国人の方たち
原則として、コンビニエンスストアの店舗でのレジ業務や品出し、清掃業務は単純労働と見なされるため、それらの業務のみに従事する場合には就労ビザを取得することはできません。それでは、日頃私たちが見かけるコンビニで働く外国人の方々はどのような方たちで、どのような在留資格を持って働いているのか、少し掘り下げて見ていきましょう。
留学生
・コンビニで働く外国人の方々の内訳で最も多いのは、在留資格『留学』で日本に滞在する留学生ではないでしょうか。2012(令和3)年度外国人留学生在籍状況調査結果によると、令和3年5月1日現在の留学生数は242,444人(前年比 37,153人(13.3%)減)で、国地域別留学生数上位5か国とその推移は以下の表のとおりです。
国名(地域) | 留学生数(人) | 前年度比増減 | ||
令和3年度 | 令和2年度 | 人数(人) | 増減率(%) | |
中国 | 114,255 | 121,845 | ▲7,590 | ▲6.2 |
ベトナム | 49,469 | 62,233 | ▲12,764 | ▲20.5 |
ネパール | 18,825 | 24,002 | ▲5,177 | ▲21.6 |
韓国 | 14,247 | 15,785 | ▲1,538 | ▲9.7 |
インドネシア | 5,792 | 6,199 | ▲407 | ▲6.6 |
➡コンビニで働く若い外国人の方々で、上記の国籍に該当するような方々の多くは、在留資格『留学』で日本に滞在する方々であることがほとんどです。
・在留資格『留学』の本旨はあくまで教育を受ける活動であって、本来は就労活動は禁止されていますが、資格外活動許可を受けることによって、週28時間以内(学校の長期休暇の期間は1日8時間以内)の就労(アルバイト)が認められます。資格外活動許可を受ければ、風俗営業等(性風俗、パチンコ店、キャバクラ、バー等)以外の業種であれば業種は問われないため、コンビニで働くことも可能になります。
日本人の配偶者等
日本人と結婚した外国人の方が、在留資格『日本人の配偶者等』、いわゆる配偶者ビザを取得すれば、日本での活動に特に制限が設けられないため、業種の制限もなく、労働基準法の範囲内において、時間制限なく就労することが可能になります。日本人の男性と結婚した外国人の女性の方が、コンビニで働くケースも多いと思われます。
永住者の配偶者等
日本に永住する方の配偶者、いわゆる『永住者の配偶者等』の在留資格が認められる方々も、日本での活動に特に制限が設けられないため、業種の制限もなく、労働基準法の範囲内で、時間制限なく就労できるため、コンビニで働くことも可能です。
➡一方、永住者の方々の多くは、原則10年以上日本に在留しているため、フルタイムで就労している場合が多く、コンビニで働く外国人の方々という部分では、『永住者の配偶者等』である場合の方が圧倒的に多いと思われます。
家族滞在が許可された方
『家族滞在』が認められ日本に滞在する外国人の方々も、資格外活動許可を受けることによって、週28時間以内の就労(アルバイト)が認められます。資格外活動許可を受ければ、風俗営業等(性風俗、パチンコ店、キャバクラ、バー等)以外の業種であれば業種は問われないため、コンビニで働くことも可能になります。
➡家族滞在の在留資格が許可され日本に在留する外国人のうち、16歳以上の人数は約11万人になりますので、家族滞在が許可された方々が、コンビニで働くケースも多いと思われます。
ワーキングホリデー期間中の方
『ワーキングホリデー』、正確には『特定活動(5号)』という在留資格の一つですが、この在留資格は協定を結んだ二国間で、相手国の一定年齢の範囲にある方に対して付与されるものです。この在留資格が許可された外国人の方は、その期間中において旅行・滞在資金を補うための就労も認められており、就労制限がありません(※)。そのため、コンビニで働く外国人の方の中には、ワーキングホリデーで日本に滞在する方も多いのではないでしょうか。
(※)ただし、風俗営業等(性風俗、パチンコ店、キャバクラ、バー等)での就労は認められません。
■留学生とワーキングホリデーでの就労の相違点■
留学の在留資格が許可された外国人と、ワーキングホリデーで日本に滞在する外国人の相違点として、ワーキングホリデーでの就労に関しては、就労時間の制限がないことが挙げられます。先に紹介した通り、「留学」の在留資格は、資格外活動許可を得た際の条件として、週28時間(学校の長期休暇の期間は1日8時間以内)までしか働くことができません。一方、ワーキングホリデーの在留資格で就労する場合、労働基準法の範囲内において就労時間の制限がなく、資格外活動許可も不要です。
■ワーキングホリデーの外国人を雇用する際の注意点■
会社が外国人の方を雇用する際、何をさておき在留カードで外国人の情報を確認します。しかし、ワーキングホリデーをもって日本に在留する方の在留カードの在留資格欄には『特定活動』とのみ記載されています。在留資格『特定活動』には様々な種類があり、そのうちの一つが、ワーキングホリデー(特定活動5号)になります。
そのため、在留カードに記載された在留資格欄だけではなく、外国人の方のパスポートも併せて確認する必要があります。パスポートの添付書類である『指定書』を必ず確認し、ワーキングホリデーが許可されて在留していることをチェックします。
コンビニ業務と就労ビザ
2022年7月現在、原則としてレジ打ち、品出し、店内清掃等、コンビニでの一般的なサービス業務で就労ビザを取得することはできません。それでは、外国人の方がコンビニで『正社員』として働くことは全く認められないのでしょうか?以下、コンビニ業界において、外国人の方々が就労ビザを取得できる場合について見ていきたいと思います。
専門的業務での就労ビザ取得
店舗での一般的なサービス業務ではなく、本部などのオフィスにおいて、店舗の運営・統括、マーケティング、人事や経理・総務などの業務に『専属』するのであれば、就労ビザを取得することができます。また、外国人観光客など、外国人のお客様が多い店舗において、通訳業務や、店員への外国語指導への従事、外国語対応のホームページ作成などに従事する場合も就労ビザが認められる場合もあります。
特定活動46号ビザの取得
2019年5月に新設された在留資格『 特定活動46号(本邦大学卒業者)』では、コンビニなどでの一般的なサービス業務が『部分的に』含まれる活動も認められることになり、外国人の方が、この特定活動46号ビザを取得して正社員としてコンビニで働くということも十分に考えられます。
■特定活動46号の在留資格申請が可能な人■
➡特定活動46号(本邦大学卒業者)としての在留資格申請を行なうには、以下の要件に該当する必要があります(要件該当性)。
一.本邦の大学(短期大学を除く。以下同じ。)を卒業し又は大学院課程を修了して学位を授与されたこと。 |
ニ.日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。 |
三.日常的な場面で使われる日本語に加え、論理的にやや複雑な日本語を含む、幅広い場面で使われる日本語を理解することができる能力を有していることを試験その他の方法により証明されていること。 |
四.本邦の大学又は大学院において修得した広い知識及び応用的能力等を活用するものと認められること。 |
➡『 特定活動46号(本邦大学卒業者)ビザ』についての詳しい解説はコチラをご覧ください。
店舗管理者として『技術・人文知識・国際業務』または『特定活動46号』の在留資格を取得する場合には、外国人ご本人に相当程度の技能や知識が求められます。そのため、『専門学校卒』の外国人の方の場合、履修科目や履修時限数が比較的少なく、店舗管理や店舗統括を担当する上での知識や技能を有することを訴求していくことが難しいため、外国人ご本人の学歴要件として『大学卒以上』であることが求められます。
店舗側に求められる要件
外国人の方がコンビニで『正社員』として働くうえで、就労ビザが許可されるには、ご本人の要件に加え、店舗を運営する会社側の規模にも一定規模以上のものが求められます。つまり、店舗数や従業員数が少ない場合、業務量も必然的に少なく、外国人の方が専門性を活かして働くだけの業務量も存在しないと判断されてしまう可能性があります。
➡店舗を運営する会社側に求められる規模に関しては、具体的に告示されているものではありませんが、実務上、店舗数では5店舗以上、年間売上高では1億円以上の規模が求められると考えられます。
増え続けるコンビニと外国人従業員のこれから
2022年1月時点でのコンビニエンスストアの店舗数は56,919店と公表されており、コンビニ業界における人手不足が深刻化しています。一方で、コンビニでのアルバイトは、留学生にとって非常に人気のある職種です。コンビニで働く従業員のうち、外国人従業員の割合は全国平均で約7%と言われていますが、都市部ではその割合はもっと高い印象を受けます。
➡留学生や、身分に基づく在留資格で日本に滞在する外国人の方々にとって、コンビニでのアルバイトは、今後も人気の職種であり続けるでしょうし、また今後、コンビニでの一般的なサービス業務が、在留資格『特定技能』で認められる可能性もあり、コンビニで働く外国人は今後もますます増え続けていくと思われます。また、コンビニ業界の人手不足を補うための人材としてだけではなく、外国人の方々が就労ビザを取得し、その知識や技術を活かして、コンビニ業界でのマーケティングや店舗運営などの業務で活躍する機会も増えていくでしょう。
最後にちょっと一言
コンビニで働く留学生の中には、
『日本国内のトップクラスの大学院で機械工学を学ぶ方』
『5か国語をネイティブレベルで話すペンタリンガルの方』
➡などなど、驚くほど『骨太』な方々がたくさんいらっしゃいます。ただ、コンビニでアルバイトをする中では、そういった部分を表に出す必要があまりないため、コンビニのオーナーや店長さん、同僚の日本人スタッフも、実際にその知識や技能についてあまり分かっていないこともしばしば。
みなさんがよく見かける外国人のコンビニスタッフも、驚くほど『骨太』で、驚くような『スキル』を持つ人材かもしれません!
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