入社月に退職した場合(同月得喪)の社会保険料の取り扱いについて

非常に残念なことですが、従業員が入社したその月に退職せざるを得なくなり、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の資格取得手続きが完了した後、同月内に退職した場合の社会保険料についてお問い合わせをいただくことがあります。今回は、入社月に退職した場合(同月得喪)の社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の取り扱いについて、簡単に解説していきます。
社会保険料徴収の原則ルール
① 月の中途から入社した場合 | ➡社会保険の加入期間(被保険者資格の取得および喪失)は、「日」単位となりますが、社会保険料は「月」単位で発生しますので、入社した月から社会保険料が発生します。被保険者資格を取得した月は、就業日が「1日」でも「1か月分」の社会保険料が徴収されることになります。 |
② 月の中途で退職した場合 | ➡社会保険の資格喪失日は、退職等した日の翌日になります。社会保険料は「資格喪失日が属する月の前月分」まで納付する必要があります。 |
③ 入社した月の中途で退職した場合(同月得喪) | ➡社会保険の資格取得した月に資格喪失した場合は、その月の保険料が発生します。 ※健康保険料の発生は確定しますが、厚生年金保険料は「一旦」発生することになります。 |

表中②の具体例:退職日が2月14日の場合
➡資格喪失日は2月15日(退職日の翌日)になり、1月(資格喪失日の属する月の前月)分まで社会保険料を納付する必要があります。
※なお、「月の末日」に退職した場合は、翌月1日が資格喪失日となりますので、退職した月分までの保険料を納める必要があります。
社会保険の同月得喪とは

社会保険の資格を取得した同月内にその資格を喪失した場合、例えば2月1日に資格を取得し、2月14日に資格を喪失した場合を「同月得喪」といいます(※)。この同月得喪ですが、健康保険料と厚生年金保険料の取り扱いについて相違があります。詳しく見ていきましょう。
(※)資格喪失日は、「退職日の翌日」になりますので、月の末日退職の場合は同月得喪には該当しませんのでご注意ください。
同月得喪における厚生年金保険料の取り扱い

原則として、同月得喪となった場合も、その月分の厚生年金保険料の納付が必要となります。ただし、厚生年金保険の資格を取得した月にその資格を喪失し、さらにその月に再度厚生年金保険の資格を取得したり、国民年金の資格を取得した場合は、先に喪失した厚生年金保険料の納付は不要となります。同月得喪となった月の末日時点の被保険者資格により、先に喪失した厚生年金保険料の納付が不要か否かを日本年金機構が判断することになりますが、実務上の取り扱いは以下の通りになります。
(1)厚生年金保険料を給与から控除する方法
➡同月得喪に該当する場合、先に喪失した厚生年金保険料の納付が不要か否かの判断は日本年金機構が行うため、原則は厚生年金保険料を給与計算の際に控除して一度納付することとなります。その後、退職者(被保険者であった方)が新たな保険加入の手続きをされると、管轄の年金事務所から対象の事業所あてに厚生年金保険料の還付についてのお知らせが送付されます(※現金還付か通常の保険料と相殺するかを選択します。何も選択しなければ、通常保険料と相殺されます)。

この場合、後処理として厚生年金保険料の還付後、被保険者負担分は事業所から被保険者であった方へ還付することになりますので、実務上はかなり手間や労力がかかることとなります。
(2)厚生年金保険料を給与から控除しない方法
➡国民年金の保険料納付書の写しや、健康保険‧厚⽣年⾦保険資格取得確認および標準報酬決定通知書等により、退職者(被保険者であった方)が新たな保険加入の手続きをされたことが確認できる場合には、厚生年金保険料を控除せず、給与計算及び給与支払いを行う場合もあります。
同月得喪における健康保険料の取り扱い

健康保険料については、同月得喪の場合もその月分の保険料の納付が必ず必要となります。厚生年金保険料と違い例外がありません。つまり、同月内に国民健康保険へ加入したり、に別の事業所に雇用され、健康保険の資格を取得したりした場合であっても、先に喪失した健康保険料の納付は必ず必要になります。同月得喪の場合、健康保険料は必ず給与計算の際に控除して納付することとなります。
同月得喪が発生した場合のその他留意点

➡同月得喪の退職者が発生したら次の点に注意してください。
同月得喪が発生した場合の留意点 |
① 同月得喪の場合で、厚生年金保険料の納付を要しない場合をしっかりと把握しておく。 |
② 管轄の年金事務所からの「厚生年金保険料の還付についてのお知らせ」に留意する。 ※同月得喪した方が、新たな年金の資格取得(種別変更)後に郵送されるため、少し遅れたころに送付される場合もあります。 |
③ 厚生年金保険料が還付される場合には、被保険者負担分を必ず退職者(被保険者であった方)に還付する。 |
④ 源泉徴収票を既に交付していた場合、内容を修正し、差替後の源泉徴収票を送付する必要がある。 |

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