衛生委員会の効果的な活用について
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、毎月1回以上、衛生委員会を開催することが義務付けられています。衛生委員会を開催する中で、「どのようなテーマについて話し合えばよいのか?」、「衛生委員会をより有効活用するには?」といった課題に直面することが多いと思います。そこで今回は、衛生委員会を活性化するためのポイントについてご紹介していきたいと思います。
目次
衛生委員会について
衛生委員会は、労働者の健康確保のため、職場環境や作業内容などを調査・審議する場です。まずは衛生委員会の構成とそれぞれの役割、衛生委員会のルールなどについて見ていきましょう。
衛生委員会の構成と主な役割
・衛生委員会は、主に以下のようなメンバーで構成されます。
① 議長(委員長):1名 | ・事業場において事業の実施を統括管理する者、またはそれに準ずる者。 ➡「総括安全衛生管理者」である方が務めることが多いですが、それに準ずる立場の方が務めることも可能です。委員会で審議した事項について、方針を決定する立場にあることが必要です。 |
② 衛生管理者:1名以上 | ・衛生管理者の資格を持った人で、その事業場の衛生管理者として選任された者 ➡社内の衛生管理、健康管理を担当している人を選任することで、衛生委員会としての活動が進めやすくなります。 |
③ 産業医:1名以上 | ・事業場の産業医として選任された者 ➡医学的な面から、職場における衛生管理や健康管理についての助言を行います。 |
④ 職場管理者・職場代表者 | ・議長(委員長)以外のメンバーの半数について、事業者は労働組合(労働組合がない場合は過半数労働者を代表する者)などが推薦する者のうちから指名しなければなりません。 ➡職場管理者は、衛生委員会で審議される職場の問題点などについて、管理者の立場から、問題の背景や改善の方針を説明したり、話し合われた内容を職場に周知する役割を担います。 |
⑤ その他スタッフ | ・上記の構成メンバー以外に、必須のメンバーではありませんが、社員の健康管理を担当する保健師、安全管理者や作業環境測定士、社内の衛生管理、健康管理に携わる人が参加する事業場もあります。 |
衛生委員会の開催に関するルール
はじめて衛生委員会の委員に指名される方は、「委員がどのような役割であるか」、「大きな責任を負うのではないか」といった不安を覚える場合もあるかと思います。ほとんどの事業場では、主業務を行いながら、衛生委員会の委員を務めることになりますので、委員の方々の不安や負担を軽減できるよよう、一定のルールを定めておく必要があります。衛生委員会開催の一般的なルールは以下のようなものになります。
① 開催頻度・開催時期 | ・衛生委員会の開催は「月1回以上」と定められています。「毎月第〇週の〇曜日」のように開催時期を決めておくと、委員の方も主業務との調整がしやすいと思います。 ・部署ごとに繁忙期が異なる事業場もありますので、そのような場合は月ごと、上期・下期ごとに開催時期を決めるなど、年間の中で適宜開催時期を決めている事業場もあります。 |
② 委員の任期 | ・衛生委員会の委員に指名されると、同じ人が委員を続けることも多いですが、衛生委員会は職場の意見をできるだけ多く拾い上げることで活性化されますので、委員の任期をあらかじめ定めておき、順番で委員を担当してもらい、できるだけ多くの従業員に委員を経験してもらうのが理想です。衛生委員会の委員の任期について、法定されたルールはありませんが、任期を2年としている事業場が多いです。 |
③ 委員会に出席できない場合 | ・衛生委員会の委員の多くは、主業務を行いながら委員を務めることがほとんどですので、主担当業務の都合上、どうしても衛生委員会に出席できない場合も想定されます。そのような場合には代理人が代わって出席するルールを定めておくことで、委員相互のわだかまりも生じませんし、衛生委員会の開催への支障も少なくなります。 ・業務都合や休暇取得などで、委員が出席できない場合に代わって出席する代理人の方にとっても、「衛生委員会とはどのような場なのか」、「どのような話合いを行っているのか」などについて知ることができる良い機会にもなり、この点も大きなメリットです。 |
衛生委員会の活性化のポイント
衛生委員会は、企業における衛生管理活動の中核に位置付けられるものですが、議題のマンネリ化などにより、形骸化しているとの指摘を受けることもあります。「快適な職場づくり」を目指すためにも、衛生委員会を活性化させることが重要です。衛生委員会の効果的な開催について、「調査審議を活性化するポイント」、「衛生委員会の進め方についてのチェックポイント」について見ていきましょう。
調査審議を活性化するポイント
・衛生委員会における調査審議を活性化させるポイントとしては以下のようなものが挙げられます。
■調査審議を活性化させるポイント■ | |
① 基本方針の作成 | ➡実態に即した方針となっており、目標が明確である必要があります。 |
② 職場の課題の現状把握とその改善 | ➡職場を健康で安全なものにしていくための課題の把握と、その課題を改善するための取り組みについて意識することが重要です。 |
③ 年間計画の策定 | ➡②の課題の現状把握に基づいて、衛生委員会開催の計画が立てられ、継続的に行われている必要があります。 |
④ 過重労働対策 | ➡過重労働対策については、主に以下の点に留意して調査審議する必要があります。 (a)労働時間の状況が客観的な方法で把握されているかどうか (b)労働時間のチェック機能がはたらいており、長時間労働の抑制措置がとられているかどうか (c)長時間労働者に対する医師による面接指導等が適切に行われているかどうか |
⑤ メンタルヘルス対策 | ➡メンタルヘルス対策については、主に以下の点に留意して調査審議する必要があります。 (a)メンタルヘルス対策に関する調査審議が、衛生委員会の年間計画に盛り込まれているかどうか (b)ストレスチェックが実施され、集団分析の結果が職場の改善に役立てられているかどうか (c)ストレスチェックの結果、その心理的負荷の高い者の面接指導が適切に行われているかどうか |
⑥ 労働衛生規定について | ➡事業場内の労働衛生に関する規定が、現在の法令に抵触していないか、その都度見直しが行われているかどうか調査審議する必要があります。 |
・衛生委員会の年間計画を策定するにあたり、月ごとに審議する内容を検討することになりますが、毎月定例的に話し合いをする議事として、季節に応じて以下のような例が挙げられます。衛生委員会の活性化を図るためにも参考にしてください。
■実施月■ | ■月ごとのテーマの例■ |
4月 | 新入社員へのサポート、安全衛生の基本ルールおさらい |
5月 | 喫煙対策(5月31日/世界禁煙デー) |
6月 | 食中毒 、熱中症対策 |
7月 | ストレスチェックの実施について(※) |
8月 | 長時間労働対策について |
9月 | 労働衛生週間準備月間/防災・救急対応について |
10月 | 労働衛生週間 |
11月 | 健康診断の実施について(※)/職場の転倒事故防止のための体力づくり |
12月 | アルコール関連の健康問題 /インフルエンザ(感染症)対策 |
1月 | 健康診断結果の確認の方法や注意点について(※) |
2月 | 花粉症対策 |
3月 | アルコール関連の健康問題(送別会や歓迎会に際して)/ 次年度年間計画について |
(※)については、事業場の実施時期により審議する月を決定します。 |
※出典:労働者健康安全機構(JOHAS)
衛生委員会の進め方についてのチェックポイント
・衛生委員会を効果的に進めるためのチェックポイントそして以下のような点が挙げられます。衛生委員会の活性化のためにも参考にしてください。
■チェック項目■ | ■改善のためのヒント■ |
□委員の出席率が悪い | □委員が出席しやすい日時で設定していますか。 |
□早めに調整できるよう、第〇週の〇曜日のように固定したり、数か月先の予定まで決めていますか。 | |
□委員が出席できない場合、代理人が代わりに出席する規定を設けていますか。 | |
□委員の発言が少ない | □それぞれの委員が委員会の役割を正しく理解していますか。 |
□委員の方々は各職場で意見を集めてから出席していますか。 | |
□その月の議事やテーマは決まっていますか。テーマが決まっていなかったり、テーマの範囲が広すぎるとコメントしづらい場合があります。 | |
□委員会での話合いの場では、委員一人ひとりに発言がないかどうか確認をしていますか。 | |
□委員長や職場管理者が一方的に意見を言って、職場代表者が発言しづらい雰囲気はありませんか。委員長や職場管理者は最後に発言するなど、委員の発言の順番に配慮していますか。 | |
□議題がマンネリ化している | □同じ人がずっと委員を務めてはいませんか。定期的に委員を交代し、多くの人に参加してもらいましょう。 |
□定例報告だけではなく、月ごとの議事やテーマを決めていますか。 | |
□委員だけではよいアイデアが出ない場合は、アンケートなどを行い、現場から議題や意見を集めてみましょう。 | |
□「衛生」、「健康」に関連した議事やテーマでなければならないと難しく考えすぎてはいませんか。「職場がもっと快適になるためには」と幅広くとらえてみましょう。 (例)「昼の休憩時間にBGMを流してほしい」、「自動販売機のメニューを入れ替えてほしい」、「休憩室に雑誌を置いてほしい」など |
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□職場の愚痴を言い合って終わってしまう | □問題点を洗い出しただけで、改善につながらない場合は、決定権のある人に参加してもらいましょう。 |
□状況が変わらない場合は、「なぜ改善は進まないのか」、「何が課題なのか」などについて、もう一度掘り下げて議論してみましょう。 | |
□委員の構成に問題がないか確認してみましょう。 | |
□毎月の議事に合わせた資料の準備が大変 | □衛生・健康情報の関連リンクを参考にしてみましょう。 ➡労働者健康安全機構 産業保健事業 ➡厚生労働省 安全衛生関係リーフレット等一覧 ➡「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」 ➡こころの耳~働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト~ ➡中央労働災害防止協会安全衛生情報センター ➡厚生労働省 働く女性の健康応援サイト ➡厚生労働省 職場のあんぜんサイト ➡リスクアセスメント ➡労働安全衛生マネジメントシステム |
※出典:労働者健康安全機構(JOHAS)
衛生委員会開催のその他注意点
衛生委員会を開催するにあたり、その他に注意するべきポイントとして、「議事録の作成・周知・保存」、「個人情報の取り扱い」について見ていきましょう。
議事録の作成・周知・保存について
事業者は、衛生委員会の開催の都度、速やかに議事録を作成し、労働者(パート、アルバイトの従業員を含む)に対し周知し、その議事録を保存する義務を負います(労働安全衛生規則第23条4項)。
① 議事録の作成 | ➡衛生委員会開催後すみやかに議事録を作成します。開催日時、場所、参加者、審議した事項、各委員からの報告の内容、連絡事項、次回予定などを記載します。また、作成後は委員長、産業医などの参加者に確認・承認を受けることが大切です。 |
② 労働者への周知 | ➡労働者への周知は、以下のいずれかの方法で行います。 (a)見やすい場所に掲示、または備え付ける(例:社内掲示板など) (b)労働者に書面を交付する(例:メールでの全体周知、社内報での配布など) (c)電子記録に残し、労働者が内容を常時確認できるようにする(例:社内イントラネットへの掲載など) |
③ 記録の保存 | ➡議事録の保存期間は3年になります。担当者が変わっても継続して管理できるよう、適切に保管することが重要です。 |
・衛生委員会の議事録については決まった書式はありません。以下のリンクからダウンロード可能な議事録のサンプルをご用意しましたので、各々の事業場に合った議事録を作成するうえで参考にしてみてください。
➡衛生委員会 議事録(サンプル)のダウンロード
個人情報の取り扱いについて
衛生委員会では、事業場内での健康課題や労働時間、職場環境などについて審議をするうえで、様々な情報を共有することになりますが、その際には、従業員の実名を伏せ、個人が特定できないよう情報の提示範囲を制限するなどの配慮が必要になります。事業場内で周知の事実となっているような内容であっても、上記の配慮は必要です。
➡また、産業医や保健師、衛生管理者など、従業員の健康管理に関する情報を積極的に収集し、取り扱う者と、その他の委員では取り扱う情報の範囲や内容が当然異なりますので、その部分についても十分な配慮が必要になります。
快適な職場環境づくりを目指して
従業員の健康に影響を及ぼす要因を洗い出し、効果的な対策を講ずることは「事業主の義務」になります。また、社内の衛生管理活動を効果的に進めていくためには、従業員の理解と協力を得ることが不可欠であり、衛生委員会では「従業員優先の視点」で、自分たちの職場を見直すという意識を持つことが大切です。
➡企業の衛生管理活動の中核に位置付けられる「衛生委員会」を効果的・効率的に開催することで、従業員の方々が明るく元気に働くことができる職場づくりを目指していきましょう!
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