賃金計算時の端数処理方法等について

手計算による給与計算という場面も少なくなってきていると思いますが、給与計算に関し、円未満の端数処理についてご質問いただくことが稀にあります。労働基準法では、賃金(割増賃金を含む)はその全額を支払わなければならないことになっています。ただし、給与計算事務の簡便化のため、一定の端数処理を行うことが認められています。給与計算時の端数処理ですが、労働基準法上、どの程度までの処理が認められているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

割増賃金計算における端数処理

割増賃金計算における端数処理に関して、次のような方法は、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便化を目的としたものとして認められ、労働基準法第24条(賃金全額払いの原則)および労働基準法第37条(割増賃金)違反とはならないとされています。

割増賃金計算における端数処理
① 1時間あたりの賃金額及び割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合 (a)50銭未満➡切り捨て
(b)50銭以上1円未満➡1円に切り上げ
② 1か月間における時間外労働、休日労働、深夜労働の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合
③ 1か月の時間外労働、休日労働、深夜労働それぞれの時間数の合計に1時間未満の端数がある場合 (a)30分未満➡切り捨て
(b)30分以上1時間未満➡1時間に切り上げ

1か月の賃金支払額における端数処理

1か月の賃金支払額における端数処理に関して、次のような方法は、賃金支払の便宜上の取扱として認められるから、労働基準法第24条(賃金全額払いの原則)および労働基準法第37条(割増賃金)違反とはならないとされています。ただし、以下のような端数処理の方法をとる場合には、その旨を就業規則に定めることが必要になります

1か月の賃金支払額における端数処理
① 1か月の賃金額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した残額)に100円未満の端数が生じた場合 (a)50円未満➡切り捨て
(b)50円以上100円未満➡100円に切り上げ
② 1か月の賃金額に1,000円未満の端数がある場合 ➡その端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うことができます。

平均賃金の計算における端数処理

平均賃金とは、給料の相場などという意味ではなく、労働基準法等で定められている手当や補償、減給制裁の制限額を算定するときなどの基準となる金額です。平均賃金は、労働者の生活を保障するためのものですから、通常の生活賃金をありのままに算定することを基本とし、原則として事由の発生した日以前3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で除した金額になります。この平均賃金の計算の際にも、以下のような端数処理の取り扱いが認められています。

平均賃金の計算における端数処理
① 3か月間の賃金の総額を総暦日数で除した金額に銭未満の端数が生じた場合 銭未満を切り捨てる
【具体例 ①】
3か月間の賃金総額が75万円、総歴日数が91日の場合
➡750,000円(賃金総額)÷90日(総歴日数)≒8,333.333...という結果になります。
この場合の端数については、銭(1円の100分の1)未満を切り捨てる(少数点第3位以下を切り捨てる)ため、平均賃金は、8,333.33円(8,333円33銭となります。
② 平均賃金を基にして休業手当等を計算する場合(特約なしの場合) (a)50銭未満➡切り捨て
(b)50銭以上1円未満➡1円に切り上げ
【具体例 ②】
上記【具体例 ①】の場合で、平均賃金を基礎に休業手当を計算すると、
平均賃金 8,333.33円×60%×3日=14,999.994円という計算結果になりますが、休業手当の額は円未満を四捨五入して15,000円となります。

【補足】遅刻、早退、欠勤等の時間の端数処理に関して

5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットするような処理は、労働の提供のなかった限度を超えるカット(25分についてのカット)について、労働基準法第24条(賃金の全額払いの原則)に反し、違法となります。ただし、このような取り扱いを就業規則に定める「減給の制裁」として、労働基準法第91条(※)の制限内で行う場合には、労働基準法第24条(賃金の全額払いの原則)に反しないものとされています。

(※)労働基準法第91条(制裁規定の制限)
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないとされています。

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