派遣労働者受け入れ時の特定目的行為の禁止について
労働者派遣法では、紹介予定派遣を除き、派遣元企業と派遣先企業との労働者派遣契約締結に際して、派遣先企業が派遣労働者を面接などによって選考すること(特定目的行為)を禁止しています。面接だけではなく、派遣先企業が履歴書の提出を求めたり、性別を特定したり、年齢を若年者に限定して派遣元に依頼する行為も、派遣労働者の特定目的行為として禁止されています。
初めて派遣労働者を受け入れる会社の場合、具体的にどのような行為が派遣労働者の特定目的行為に該当するのか、そもそも、なぜこの特定目的行為が禁止されているのか、ご不明な点も多いと思います。今回は派遣労働者の特定目的行為について、詳しく解説していきます。
特定目的行為とは
派遣先企業が、労働者派遣契約締結に際し、派遣労働者を面接などによって特定する行為と特定目的行為といい、労働者派遣法26条6項で禁止されています(ただし、直接雇用を前提として行われる紹介予定派遣は除きます)。労働者派遣法26条6項では、次のように規定されています。
➡労働者派遣(紹介予定派遣を除く)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為(特定目的行為)をしないように努めなければならない。
特定目的行為の具体例
・具体的には、次のような行為が派遣労働者の特定目的行為に該当します。
派遣労働者の特定目的行為の具体例 |
① 派遣就業に先立って、事前に面接を行う(※事前面接の要請もNG) |
② 派遣労働者の履歴書の提出を求める |
③ 派遣労働者の性別を限定する |
④ 派遣労働者の年齢を若年者に限定する |
⑤ 派遣労働者の個人情報や業務に関連しない情報を聴取する |
⑥ 派遣就業に先立って、適正検査や筆記試験を実施する |
派遣就業に先立って、派遣先にて面接や選考、顔合わせなどを行うことは特定目的行為として禁止されていますが、派遣労働者が自ら希望し、派遣先の場所や業務の内容を確認するための「職場見学」は特定目的行為とはみなされません。
➡ただし、この職場見学の際には、派遣元企業の担当者が同席し、特定目的行為が行われないようサポートする必要があります。また、職場見学の際、派遣労働者の個人情報(※)や業務に関連しない情報を聴取することは禁止されています。
(※)ここでいう「個人情報」とは、派遣労働者に関する以下のような個人情報を指します(例示列挙)。
① 氏名 |
② 住所 |
③ 年齢 |
④ 出身地 |
⑤ 国籍 |
⑥ 信仰する宗教 |
⑦ 未婚か既婚の別 |
⑧ 家族構成 |
⑨ 学歴(学校名等も含む) |
⑩ 以前の勤務先名(退職理由等も含む) |
・特定目的行為の経験の有無(派遣労働者調査より)
特定目的行為が禁止される理由
では、なぜ派遣労働者の特定目的行為が禁止されているのでしょうか。労働者派遣は、あくまで派遣元企業(人材派遣会社)が雇用者であり、派遣先企業は、派遣労働者に対して指揮命令を行う仕組みになっています。下の図(労働者派遣の仕組み)にあるとおり、派遣先企業と派遣労働者の間には雇用関係は存在しません。派遣労働者の職業能力を評価するのは、あくまで雇用者である派遣元企業(人材派遣会社)であり、また、派遣先企業にどの労働者を派遣するかを決定する権限を有するのも、雇用者である派遣元企業(人材派遣会社)になります。つまり、そもそも派遣先企業には、就業に先立って、派遣労働者に対して面接を行ったりする権限自体がありません。
■労働者派遣の仕組み■
特定目的行為に対する罰則
派遣労働者の特定目的行為の禁止を規定した労働者派遣法26条6項は努力規定(努めなければならない)となりますので、仮に特定目的行為が行われた場合でも、労働者派遣法上の罰則の適用はありません。ただし、特定目的行為が行われた場合、労働者派遣法違反として派遣先企業に対して都道府県労働局より是正指導が行われます。また、派遣元企業(人材派遣会社)も、「派遣先による派遣労働者を特定することを目的とする行為に対して協力してはならない。」とされています(派遣元指針第2の13)。
派遣労働者の方にとって、雇用者はあくまで派遣元企業になります。ご自身の個人情報や機微情報について、派遣先企業でどのように取り扱われているか不安に感じている派遣労働者の方の声を聴く機会もございます。労働者派遣法の趣旨をしっかりと理解し、労働者派遣の依頼や、派遣就業に先立って行われる職場見学の際に、特定目的行為とみなされることがないよう、十分に注意し配慮することが大切です。
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