雇用しても大丈夫?在留資格『特定活動』について

「雇用したい外国人の方の在留カードを確認したところ、在留資格に『特定活動』と記載されていますが、この方を採用しても問題はないでしょうか?」

当事務所におきましても、このご質問をいただくことが度々ございます。このご質問については、「採用後に従事する職務内容が、個々の外国人の方に許可されている活動の範囲内であれば問題ありません。」とお答えしております。今回は、企業の担当者様にとっても理解しづらい在留資格である『特定活動』について解説していきたいと思います。

『特定活動』ってどんな在留資格?
概要

在留資格『特定活動』とは、他の在留資格に該当しない活動の受け皿として、「法務大臣が個々の外国人について特に活動を指定する在留資格」のことを言います。この『特定活動』で認可される代表的な活動例としまして、「インターンシップ」「ワーキングホリデー」があります。

さらに令和元年5月30日より、これまで制限されていた外国人の接客・販売業務への就労を認可する「46号告示」が施行され、在留資格『特定活動』は一層注目を集める在留資格となりました。

在留資格『特定活動』で在留する外国人を雇用する場合の注意点

・『特定活動』が許可されて在留する外国人の方を雇用する際には、以下の2点に留意する必要があります。

(1)特定活動で許可される活動内容を「指定書」の記載内容で確認する
➡特定活動で在留する外国人の方の在留カードには「特定活動」としか記載されていないため、当該外国人の方のパスポートに添付されている「指定書」の記載内容で日本で許可されている活動内容を確認する必要があります。
指定書とは日本における滞在理由や滞在期間を第三者からも容易に確認できるようにするため、特定活動で許可される活動内容の詳細が記載されているパスポートの添付書類になります。
(2)資格該当性の確認を慎重におこなう
➡特定活動の在留資格申請において、詳細な在留資格審査基準が記されていない活動も多く、採用後に従事する職務内容が、個々の外国人の方に許可されている活動に含まれるのかどうかの判断が難しく、資格該当性の確認をより慎重に行なう必要があります。
➡採用後の職務内容が在留資格に該当するかどうか判断できない場合は、就労資格証明書の交付申請を行ないます。地方出入国在留管理官署へ就労資格証明書交付申請を行えば、在留資格に該当する職務内容かどうかを確認することが可能です。
在留資格『特定活動』の種類

・在留資格『特定活動』は以下の3つに大別されます。

1.出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動
➡法務大臣の告示ではなく入管法の中で規定されている特定活動になります。
2.告示特定活動
➡法務大臣があらかじめ告示している活動内容で、現在では50種類の活動に分類されます。
3.告示外特定活動
➡あらかじめ告示されてはいませんが、慣例的に法務大臣が日本への上陸や在留を認める活動になります。
※告示とは、行政機関等が一定の事項を広く市民に周知させる行為をいいます。

・大きく3つに分類される『特定活動』について、以下さらに詳しく見ていきましょう。

出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動

・出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動は3種類あります。

(1)特定研究活動
➡研究機関の施設で特定の分野に関する研究、研究の指導及び教育をする活動になります。
※上記と同様の分野に関連する事業を経営する活動も含まれます。
(2)特定情報処理活動
➡自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を要する情報処理に関わる業務に従事する活動になります。
(3)特定研究等家族滞在活動及び特定情報処理家族滞在活動
➡上記(1)または(2)で滞在する外国人の扶養を受ける配偶者又は子が日本で行う活動になります。

・「特定研究・特定情報処理」に関する審査基準として、以下の2点の審査基準を満たす必要があります。

(1)従事する業務について次のいずれかに該当していること
 (a)当該技術もしくは知識に係る科目を専攻して大学を卒業し、またはこれと同等以上の教育を受けたこと
 (b)当該技術もしくは知識に係る科目を専攻して日本の専修学校の専門課程を修了したこと(修了に関し法務大臣が告示した要件に該当する場合に限る)
 (c)10年以上の実務経験を有すること (大学、高校等において科目を専攻した期間を含む)
(2)日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を受けること

※法務大臣が告示する情報技術に関する試験に合格し、資格を修する場合は、上記(1)に該当することを要しません。

告示特定活動

・告示特定活動は令和4年6月1日現在50種類の活動内容が含まれます。以下それぞれ確認していきます。

1号 外交官・領事官の家事使用人
2号 高度専門職・経営者等の家事使用人
3号 台湾日本関係協会の在日事務所職員とその家族
4号 駐日パレスチナ総代表部の職員とその家族
5号 ワーキングホリデー
➡日本文化及び日本国における一般的な生活様式を理解するため、本邦において一定期間の休暇を過ごす活動並びに当該活動を行うために必要な旅行資金を補うため必要な範囲内の報酬を受ける活動
6号 アマチュアスポーツ選手
7号 6号のアマチュアスポーツ選手に扶養される配偶者または子
8号 外国人弁護士
9号 インターンシップ
➡学業の一環として、日本の企業等において報酬を受けて実習を行う活動で、1年未満かつ当該大学の修業年限の2分の1を超えない期間内で当該機関の業務に従事する活動
※報酬を受けない無償のインターンシップは、90日以上が在留資格「文化活動」、90日以内の場合が、在留資格「短期滞在」となります。
10号 イギリス人ボランティア
11号 削除
12号 短期インターンシップを行う外国の大学生(3ヶ月未満)
➡学業の遂行及び将来の就業に資するものとして、夏季休暇等の期間(3月を超えない期間)を利用して我が国の企業等の業務に従事する活動(サマージョブ)
13号 削除
14号 削除
15号 国際文化交流を行う外国の大学生
16号 EPAインドネシア人看護師候補研修生
17号 EPAインドネシア人介護福祉士候補研修生
18号 16号のEPAインドネシア人看護師候補研修生の家族
19号 17号のEPAインドネシア人介護福祉士候補研修生の家族
20号 EPAフィリピン人看護師候補研修生
21号 EPAフィリピン人介護福祉士候補研修生(雇用)
22号 EPAフィリピン人介護福祉士候補研修生(学校・養成施設)
23号 20号EPAフィリピン人看護師候補研修生の配偶者または子
24号 21号EPAフィリピン人介護福祉士候補研修生の配偶者または子
25号 医療滞在(日本の医療機関で治療を受ける活動)
26号 25号医療滞在者の日常生活上の世話をする者
27号 EPAベトナム人看護師候補研修生
28号 EPAベトナム人介護福祉士候補研修生(雇用)
29号 EPAベトナム人介護福祉士候補研修生(学校・養成施設)
30号 27号EPAベトナム人看護師候補研修生の家族
31号 28号EPAベトナム人介護福祉士候補研修生の家族
32号 外国人建設就労者
33号 在留資格「高度専門職」で在留している外国人の配偶者の就労
34号 高度専門職外国人あるいはその配偶者の親
➡世帯年収800万円以上の高度専門職外国人と同居し、かつ当該外国人の7歳未満の子あるいは、妊娠中の配偶者をサポートする場合
35号 造船労働者
36号 研究者、研究指導者、研究・教育に関する経営者
37号 情報技術処理者
38号 36号、37号の活動で在留する者に扶養される配偶者または子
39号 36号、37号の活動で在留する者あるいはその配偶者の親
40号 観光・保養
➡在留資格「短期滞在」では最長で90日間の在留期間になりますが、資産3,000万円以上などの富裕層であれば、観光・保養のために最長1年間日本に滞在することが可能。家族も帯同している場合は、要件が6,000万以上になります。
41号 40号で在留する外国人の家族
42号 製造特定活動計画で製造業に従事する者
43号 日系四世
44号 外国人起業家
45号 44号外国人起業家の配偶者または子
46号 4年制大学・大学院の卒業生でN1以上の日本語力を有する者
47号 46号で在留する外国人の扶養を受ける配偶者または子
48号 東京オリンピック関係者
49号 48号の配偶者または子
50号 スキーインストラクター
告示外特定活動

・代表的な告示外特定活動として、以下の3種類が挙げられます。

(1)日本に在留する外国人の方の高齢となった親の呼び寄せ
(2)就職先が決定しないまま卒業した留学生の就職活動
(3)在留資格更新許可申請が不許可となった場合の出国準備

以下、それぞれ詳しく見ていきましょう。

(1)日本に在留する外国人の方の高齢となった親の呼び寄せ
・「人道上の配慮」を理由として許可される特定活動になりますが、明確な許可基準は公表されていません。許可される条件として想定できる点は以下の4点になると思われます。

(a)親の年齢が高齢であること(一般的には70歳以上)
(b)本国に親の面倒を見る者がいないこと
(c)親が日本での就労を予定していないこと
(d)招聘する者に親を扶養する能力があること

※在留資格『高度専門職』が許可された外国人の場合、本人、またはその配偶者の親(養親を含む)の入国・在留が認められます。

(2)就職先が決定しないまま卒業した留学生の就職活動
・既卒の留学生が日本での就職活動を希望する場合、特定活動が許可される可能性があります。この場合、以下の2つに分類されます。

(a)継続就職活動大学生
➡在留資格「留学」をもって在留し、日本の大学、大学院、短大、高専を卒業した外国人で、かつ、卒業前から引き続きの就職活動を目的として日本への在留を希望する者
(b)継続就職活動専門学校生
➡在留資格「留学」をもって在留し、日本の専門学校を卒業した外国人で、かつ、卒業前から引き続きの就職活動を目的として日本への在留を希望する者のうち、専門学校での専攻内容が、「技術・人文知識・国際業務」等の就労可能なビザにおける資格該当性との関連が認められる者

卒業後もアルバイト等を続ける場合には、あらためて資格外活動許可の申請を行ない、許可を受ける必要があります。

・就職先が決定しないまま卒業した留学生の就職活動を行うとして、特定活動が許可された場合、まずは6か月間の特定活動の在留資格が付与されます。その後さらに1回は在留期間更新許可申請を行なうことができるため、最長1年間は就職活動を続けることが可能です。

■内定から就業開始まで期間がある場合■
・例えば9月に採用内定を受け、実際の就業開始が翌年の4月からとなるような場合、内定後1年以内で、かつ卒業後1年6か月以内に内定先に入社する場合であれば「内定先企業」と「待機期間」が指定された新たな「特定活動」へ在留資格の変更が可能です。

上記の新たな特定活動への在留資格変更許可申請を行なう際には、採用後の実際の職務内容に該当する就労ビザ取得の申請の際に必要とされる書類と同様の書類を地方出入国在留管理官署へ提出する必要があるため、4月以降の実際の職務内容に該当する就労ビザの取得可否の審査も同時に行われることになります。

(3)在留資格更新許可申請が不許可となった場合の出国準備
・在留資格更新許可申請が不許可になった場合、通常は30日の出国準備期間が与えられます。ただし、現在の職務内容等が考慮されて、2〜4か月の出国準備期間が特定活動として許可される場合もあります。

まとめ

在留資格『特定活動』は、人道上その活動の必要性が一定以上認められる場合や、特定活動として、当該外国人の在留を認めることが日本にとって有益なものである場合に例外的に認められる在留資格であることが分かります。

また、法務大臣の告示はかなりの頻度で更新されていますので、最新の情報を常にチェックすることも重要です。特定活動を許可されて在留する外国人の方の採用などでご不明な点があれば、ぜひ当事務所にご相談ください。

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